商店会員インタビュー vol.7 「オズのクリニック」

三和・緑道商店会員インタビューの7回目は、2021年8条買物公園に開院した「オズのクリニック」。

クリニックのみならずさまざまな活動を行なっている、商店会に新風を吹き込んでくれている存在です。

院長の大坪陽一さん、奥様の陽子さんにお話を伺いました。



―ここでクリニックを開くことになったきっかけを教えて下さい。


(陽一さん)元々東京で働いていたところを辞めまして、地元が旭川ということもあり「地元で開業しようかな」と、ある種成り行きと勢いに任せたという感じで…。

実は東川とこのエリアで悩んでいたんです。色々と回る中で、「ここいいんじゃない?」とおすすめされたのが以前MaitoPartaさんが入っていたこの場所だったんです。自分が学生時代緑道界隈によく来ていたという思い入れも手伝って、ここに決めました。

独立するにあたって「医療一本でやろう」と決めていたわけではなく、いろいろやってみたいという思いもありまして。ずっと医療をやってきたけれど、それが自分の人生のメインとなるのかはわからないし。最低限食べられるようにやっていければ、あとは自分の趣味なり活動に費やせるかなと。


(陽子さん)医療の面で言うと、例えば標準とされている治療があったとしても、大きな病院にいると上の人から「無理ですね」と言われてしまえばやれなかったりする。ガイドラインにのっとった治療を提供できればというのもあって…。


(陽一さん)もう少し嘘がない言い方をすると「自分の裁量で専門性を発揮して診察・治療ができる」というのが、独立する上で重要なポイントでした。


―実際にこの場所でクリニックをスタートしてみていかがですか?


(陽一さん)大変満足しています。まず「一階である」というところが気に入っています。クリニックを開くにあたってコンサルさんに相談した際「精神科である以上、一階だと5年後には人が来なくなりますよ」と言われていたんですけどね。実際おすすめされた物件の中には建物の二階部分というのもあったんです。でも今は「精神科だから行きづらい・入りづらい」という時代じゃないんじゃないかなと。精神科だって他の科と変わらず体の一部を診るわけですし、気兼ねなく来てほしいなという思いで一階にドンと構えようということになったんです。

ただ…意外とたどり着けない人も多くて(笑)。昔だったらあり得ないんですけど、若い方とかで「買物公園ってどこですか?」って言われちゃったこともあるんですよ。他にも駐車場がないとか患者さんにとっての立地条件の難点はないわけじゃないんですが、実際に来てみると暖かい雰囲気を感じて下さる方も多くて。そういった話を聞くと、やっぱりここに決めてよかったなと思います。


(陽子さん)開院の前年に出張でヨーロッパに行ったんですよ。その時訪れたフィンランドやエストニアの雰囲気がすごく印象に残っていて。物件探しの段階でここが候補に挙がった時に話していたんですが、「MaitoParta」・「こども冨貴堂」・「ハルニレカフェ」・「まちなかぶんか小屋」など…自然と共にこういうお店や場所あるのがすごく北欧っぽいと思ったんです。だから内装やインテリアもちょっと北欧っぽい雰囲気を意識しています。


(陽一さん)どんな雰囲気にするかっていうのも、なんでもあり得たとは思うんです。ただ、前にテナントとして入っていたのがMaitoPartaさんということもありましたし、「旭川か…北欧だな!」と(笑)。そういう個性がクリニックに欲しかったんですよ。

でも、北欧っぽい雰囲気を意識したとはいえ、やっぱり一番のキーコンセプトは「オズの魔法使い」ですから。



―最初「オズのクリニック」という名前を聞いた時にそうなんじゃないかとは思っていたのですが、やはり「オズの魔法使い」が由来なんですね!


(陽一さん)オズの魔法使いって、最初は偉大な魔法使いだと言われていたけれど、物語の終盤で実は特に特別な何かが出来る人ではなかったと判明する…つまり詐欺師のお話なんですよ。家に帰る道がわからないドロシーと出会うカカシ・ライオン・ブリキの木こりは、勇気や心といった何かしら自分の中に欠けている部分があるとか課題があると「思っている」人たちです。でも、物語を知っている方ならわかると思いますが、魔法使いの魔法がなくてもみんなちゃんと欠けていると思っていた部分を持っていたんですよね。つまり解決法は自分の中にあるから、そこを治療で見つけていきましょうというのがコンセプトなんです。オズの魔法使いをきっかけに、クリニックのキーカラーをエメラルドの都にちなんでエメラルドグリーンにしようとか、ここから駅前のイオンまでを黄色いレンガ道に見立てて王国(=イオン)を目指そうとか、いろいろと繋がってきたというわけです。

私自身「詐欺師」っていうワードが結構気に入っていて…(笑)。昔父親から「口先だけでする仕事には就くな」と言われていたんですが、見事に口先だけの仕事に就いて…だからしばらくは隠してたんですよ。薄々気づいてはいたでしょうし、地元で開業したから今はもちろん知ってますけどね。

家族もそうですけど、地元に帰ってきたことで古い知り合いとも少しずついろいろなところで繋がってきているのも面白いです。


―オズのクリニックさんでは現在「まちなか保健室」をはじめ診療だけでなく様々な活動をされていますが、これらはどのようなきっかけでスタートさせたんですか?


(陽一さん)元々この場所を患者さんや家族の団体などにイベント的に使ってもらえたらという思いはあったんですよ。「まちなか保健室」もそのひとつで、代表は妻がやっていますが別の先生が中心となって動いていて、うちは場所を提供しているといった形です。他にも患者さんの家族会も開いていますし、趣味の一環で数学のイベントもやっています。

やってみたいことがいろいろあって、とにかく「箱」が欲しかったんですよ。だから今後も落語とか笑いヨガといったイベントや勉強会もやっていきたいですね。



―緑道でクリニックを開院されて三和緑道商店会の一員となりましたが、どのような場所・雰囲気だと感じていますか?


(陽一さん)非常にお互いの顔が見えている場所だなと思います。それでいてすごく圧が軽いですね。誰かが何かをやらなきゃいけないっていうプレッシャーなく、みんながそれぞれ楽しんで活動できているなという気がするんですよね。皆さん働き者なんですが、決して相手に無理はさせない。程よい距離感がありながら、何かあったらお互いに助け合えるんだろうなという安心感があります。それがすごく楽なんです。


―最後に、今後の展望をお聞かせ下さい。


(陽一さん)今もやってはいますが勉強会や患者さんの家族向けの講座はもっとやっていきたいと思っています。訪問医療とかも今後より広げていけたらいいなという思いもあるんですが…そのためには人を雇う必要もあるし、現状どうしてもネックになるのは子供がまだ小さいということで。企画好きな方がいたら、一緒にやるのも面白いのかなと。


―我が家も子供がまだ小さいので、大変共感します…!


(陽一さん)幸いこの周辺は、おきしぺたるむさんやこども冨貴堂さんなど子供が遊べる場があるので、ありがたいですね。そういう意味では、この辺りは昔の長屋の距離感や役割ともどこか通じているような気がしていて。お互いの顔が見えるし、我々はもちろん子供たちもある程度安心して過ごせるし…。「安心感」、「安らぎ」、「くつろげる」、この辺りが緑道エリアのキーワードなのかな。私の仕事はそういった街づくりに一役買う仕事の一つかもしれないと思っています。




[インタビュアーからひとこと]

以前MaitoPartaが入っていた場所にいらしたオズのクリニックさん。そのような事情もあり、筆者は勝手に縁を感じています(笑)。

開院することになったという話を聞いた当初は、「あの場所にクリニックが入るんだ!」と意外な驚きがあったのですが、8条の緑が多く程よく静かな雰囲気とすごく合っているなとすぐに腑に落ちたのを覚えています。

大坪さんのお話の中でも、「今は精神科だから行きづらい・入りづらいという時代ではない」という言葉があり、そういった考え方や価値観はまさにこの緑道にぴったりです。

今後もさまざまな活動を通じて楽しい驚きを見せて下さることを期待しています。




インタビュアー 知本有里(MaitoParta)


札幌市出身。23歳の時就職をきっかけに旭川へ。

現在緑道にて、北欧雑貨店「MaitoParta」を営む。

店舗の2階で暮らす、名実ともに緑道の住人。


三和・緑道商店会

北海道旭川市7条緑道を中心とする三和・緑道商店会は、ここで生きる「人」のくらしを第一に考え、「まちと人」「人と人」「自然と人」をつなぐことを目的として活動しています。

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