商店会員インタビューvol.2「オステリアベーネ」

■三和・緑道商店会 店舗紹介インタビュー vol.2

大変長らくお待たせをいたしました。

三和・緑道商店会員インタビューvol.2は、買物公園と緑道が交差する角ビル3階でイタリアンレストランを営む、Osteria Bene(オステリア・ベーネ) 山中策永さんです。

-策永さんは旭川ご出身ですか?

生まれは旭川ですが、小学校の6年間は志比内(東神楽町)という小さな町で育ちました。小学校卒業前に旭川に戻り、高校までをこの街で過ごしました。その後4年間東京のイタリアンのお店で修行をして、ご縁があって22歳から2年ほど東川町で働いたのち、お誘いを受けて8年間釧路市で働いていました。


-ここにお店を構えたのはいつ頃ですか?

10年前。32歳で独立しようと思い、物件を探しに旭川へ戻ってきました。独立の際、釧路にするか地元旭川に帰るかすごく悩んだんですけど、釧路でとてもお世話になった方が「旭川の方が人口も多いし、いいんじゃない?」と仰っていたのもあり、とりあえず旭川市内どこでもいいからと思って物件を探しました。それでたまたま知人がこの物件が空いたと教えてくれて。

10年前は、ギャラリープルプルさんがオープンしたてで、今あるお店もほとんどなかったんです。だからここでお店をやると言った時に、まず言われたことは「絶対やめた方がいい」「絶対潰れる」「ここだけで飯なんか食っていけないから副業した方がいいよ」って。(笑)その当時、年代関係なくこの辺りのイメージはあまり良くなかったみたいで、今ではちょっと考えられないくらい、ここに来る目的がないという人が多かったようです。しかもビルの3階っていう目立たないところですし。でも、うちは目立たないようにやっているんです。看板も大きく出さず、広告も打っていません。オープン当時ブログが全盛期だったから、食べ歩きしているようなブロガーに来ていただいて、それで認知してもらったりはしました。今はさらに情報社会だから、ここに来た方たちがSNSで拡散してくれています。

この場所が好きとか、お店のことが好きとか、僕らの作るご飯が好きとか、そういうわかってもらえる人が来てくれるお店をやりたくて。色々苦労も多いけど、10年潰れずにやっていけているので、立地的にも良かったのかなと思います。

-物件を選ばれる際に、都会過ぎず郊外でもなくというような立地条件はあったのですか?

立地のこだわりはありませんでした。イタリアンは面白くて、ジャンルによってお店の呼称が変わるから、見つけた場所の雰囲気で決めようと思っていました。例えば人通りの多い路面店が見つかれば、トラットリアと言って食堂のような気軽に入れるようなお店にするとか、こういう目立たないところにあるならオステリア、酒場的な、お酒をメインでできるお店、とか色々考えていて、ここを見た時に、まさにオステリアだなと思いました。イタリアの街角にあるようなオステリアができたら面白いなって。

僕が高校生の時はこの辺りに古着屋さんが数軒あって、よくうろうろしていたんです。ここからスタートして古着屋さんを巡って街の方に流れてっていう流れがありました。あの頃からこの辺りは小洒落てて木々があるし、札幌の裏参道とか東京の裏原宿みたいになればいいなって思っていたんですよね。大人になって帰ってきた時にそれを思い出して、繁華街からちょっと裏に入ったところにおしゃれなお店や雰囲気のあるお店がポツポツあるような、そんな場所になるんじゃないかな、なったら面白いなって勝手に想像していました。

でも、いざここで働いてみると、またそれが全然違っていて。アンダーグラウンドな世界もあったり、下町のような部分もある不思議な場所。僕は逆にそれが無茶苦茶面白くて、なんて魅力的な場所なんだろうと思いました。ただ上っ面の雰囲気だけじゃなく、昔から地元旭川の人たちにしっかり根付いている場所だなって。

その後カフェやチーズ屋さんができて、中華料理屋さんもあるし居酒屋さんもできたし、最近なら雑貨屋さんも激戦区ですよね。あとは街角に小さいお花屋さんでもあったら嬉しいな、とか考えてしまうくらいです。10年前は辺境の地みたいだったけど(笑)、昔に比べたら若い人たちや女性層もすごく多くなりました。お惣菜屋さんや八百屋さんのように昔から商売されている方達もいて、僕らのように新しい人たちが入り混じって、今はとても面白いんです。

-趣のあるお店が多いから、わざわざ来たくなるような感じがあるし、そういうお客さんが多いと思うんですよね。

あのお店があるから、このお店に行きたいから、みたいに目的の場所という感じは確立されてきましたね。。


-ここは元々飲食店だったんですか?

そうみたい。独立する頃はお金もなくて、居抜きを探していたんですよ。自分達の条件に合うような物件探しが結構困難だったんですけど、ここは壁とかは昔のままです。厨房の中は多少変えたけど、形はほとんどそのままで、カウンターに板を張ったり、窓枠などは色を塗ったり。

-形はそこまで変えていなくても、雰囲気はガラッと変わったという感じですか?

そうそう。お金をかけずに最低限で独立したいという気持ちがあったので、ほとんど自分達の手でやりました。


-お客さんはどのような方達が多いですか?

客層的には女性の方が多いですかね。僕は結構気軽なつもりでやっているんですけど、意外と結婚記念日とか誕生日とか、お祝い事とかで使ってくれることも多いです。やっぱりいい食材を使って美味しいものを出したいという気持ちがあるから、旭川のお店の中では強気な値段設定ではあるのかと思います。気軽に来てワインを飲みながらパスタでも食べてパッと帰ってくれても、うちは全然いいよって感じでやってはいるんですけどね。

ホテルが近いこともあって、観光客の方たちがふらっと来てくれたりするのもすごくありがたいです。うちは地元食材を多く使っているので、とても喜んでくださいます。


-野菜はほとんど旭川や近郊のものですか?

もちろん!旭川の野菜は間違いなく美味しいですから。生産者さんと直でやりとりすることもできますが、僕は毎日のように八百屋さんに行って、物を見て仕入れています。八百屋さんとはお互いお店を行き来したりとお付き合いもあって、そういうご近所付き合いも楽しみの一つなんです。


-商店会には、お店を開いた時から入られていたんですか?

前身の商店街の頃から入っていました。以前の形態で理事をされていた方が引退されて、今の理事の方達をはじめ新しくお店を開いた方達が一生懸命いい形を作ってくれました。個性的な方が多いけど、みなさん尊重し合っています。変に干渉されないし、こちらからもしない。だから、何かに抑制されることなく僕がのんびり自分のペースで料理を作って、お客さんに美味しいって言ってもらえて、あぁよかったなっていう生活を送れているのは、「ここだから」というのもあるんです。

この商店会は本当にみんな無理強いとかもなく、「これをしてください」ではなく「できたらお願いしますね」くらいのスタンスなので、僕らにとってはめちゃくちゃありがたいです。拘束時間が長い仕事ですし、二人でやっているのもあって、何かお手伝いしたいという気持ちはあるけど無理だなっていうことも結構多くて心苦しいところもあるんですけど、それをみなさん快く「できる時があったらでいいので」と言ってくれるんです。ぐいぐいくる感じはないし、付かず離れずみたいな。

みなさん商売されている方達が多いので、お互いの気持ちもわかるんですよね。


-だからと言って、完全にバラバラではないところがすごく素敵だな、と。

お互いに個を大事にしつつ、何かある時は助け合おうって常に思っています。何かあれば、僕らもできることはお手伝いしたい。お祭りの時とかはどうにか参加できるように、と思うんですけど、二人でやっている以上売子さんも立たせられなくて、そうすると誰かが「私が代わりに売ります」って言って手伝ってくれるんです。それなら僕も出店するって言えるし、その気持ちも嬉しいですしね。「Beneさんがなんか出すんだって」って言って買いに来てくれる人が少しでもいてくれたらやりがいもあって、いつもお店で出せないような形のものも出せて僕も面白いです。

僕はいつもここ(3階の窓)から眺めているだけだけど、パッと見た時にみんながなんか楽しそうにしていたりとか、イベントをしていたりとかすると「なんかいいなぁ」って思うんです。そうやって率先してたくさんのことをやってくれている方達のおかげで、今のいい雰囲気があるから、本当にしみじみ「ありがたいね」って二人でよく話しています。だからなるべくできることがあれば手伝うし、無理な時は無理だって言える、そんな形をみなさんが作り上げていっている。みなさん大人です。


-最後に、緑道エリアの魅了やおすすめを教えていただけますか?

僕らが一番好きなのは、何よりも緑道の四季折々を感じられる雰囲気。とにかく緑道を見ると心が癒されるんです。僕らがいつも歩くのは、常盤公園まで行って、ぐるっと常盤公園を一周して戻ってくるコース。あまりこのエリアに来たことがない人は、散歩がてらぷらぷらと歩いてみて、点在しているお店を観察してみたらいいんじゃないかなと思います。僕らは10年このエリアにいるけど、いまだに飽きずに緑道を散歩しているし、歩くたびに色々な発見があります。ちょっと裏路地に入ると「ここは何のお店だろう?」って変なお店がいっぱい!そして個人店や路面店て少し敷居の高さや入りづらさを感じたりすると思うんだけど、全然そんなことはないからとりあえず入ってみて欲しいです。コロナ禍前は外国人も含め観光客もたくさん来てくれていたんだけど、観光客の方がこのエリアを回るのはうまいかもしれないですね。この辺を散歩しながらあちこち入っています。



-旅先だと勢いもあって入れる感覚もあるのかも。地元だからこそ入りづらい、知らないところは行きづらい、みたいな。

それはありますよね。でもそんなに気難しく考えないで、ただ散歩するだけでも楽しいと思うんですよね。夏はばーっと緑があって、秋になるとこの窓から紅葉が見えたり、雪が降ってイルミネーションが始まると本当に綺麗。都会にいながら四季折々の木々を感じられる。景色もここを作り上げている人たちも全部含めて、この場所は唯一無二だと思っています。もうここ以外でお店をやるのは考えられないっていうくらい、僕はこの場所が気に入っているんです。緑道が大好きなんだよね。まずは散歩がてら、ちょっと歩いてみて欲しいですね。


[インタビュアーからひとこと]

お話を伺って、山中さんご夫妻の緑道愛をたっぷり感じました。

自分達が「心地よい」と思えるペースでご商売を続けていることは、決して簡単なことではないと思いますが、お二人の大らかなお人柄や商店会の皆さんの素敵な距離感を感じさせていただき、憧れずにはいられませんでした!


インタビュアー 木村萩野

洞爺湖町出身。大学卒業後、ホテルや旅行会社で旅行・観光業に従事しつつ、ワーキングホリデーで3ヶ国に滞在。現在は地域おこし協力隊として旭川市の移住促進や中心市街地活性化を進める。旅とキャンプと食べ飲み歩きが好き。



三和・緑道商店会

北海道旭川市7条緑道を中心とする三和・緑道商店会は、ここで生きる「人」のくらしを第一に考え、「まちと人」「人と人」「自然と人」をつなぐことを目的として活動しています。

0コメント

  • 1000 / 1000