商店会員インタビュー vol.9 「tocotoco.」

緑道沿いに位置する「ハルニレカフェ」の一角で、革小物のお店「tocotoco.」。

小さなアトリエにはカラフルでかわいらしい革のアクセサリーや小物がたくさん並んでいます。

今回は、革作家の長谷川智子さんにお話を伺いました。



―まずは、作家活動を始めたきっかけを教えて下さい。


雑貨屋さんをしているお友達から、「いろんなカラーのスエードがあるんだけど、何かに使えないかな?」という相談を受けたんです。その雑貨屋さんではお洋服も扱っていたので、「コサージュはどう?」と提案したところ、「じゃあ作ってみて!」とお願いされたのがきっかけでした。元々布を使った手芸や、友人のイラストをもとにぬいぐるみを作ったりということはやっていたんですが、革は初めてで。興味を持ったこともなければ扱ったこともなかったので、「ただ切っただけでは形が定まらないから、少し硬くなるように加工してみよう」とか独学で試行錯誤しながら作ったんです。

それでその雑貨屋さんに置いていたんですけど、別なお洋服屋さんなどから「うちにも置いてみない?」と声をかけていただいたり、革を扱っているということを聞きつけた友人や知人から、「革のお財布作れない?」「キーホルダーを作ってほしい」といった相談を受けたりしているうちに、何となく自分で勉強しながら革の世界に入っていったという感じですね。


―そこから作家活動をスタートされたんですね。現在屋号に使っている「tocotoco.」について、由来を教えていただけますか?


自分の下の名前が「ともこ」なので、友人から「とこちゃん」と呼ばれることが多く、特に深く考えずにそこからつけました。

現在のロゴを作成して下さったのが、デザイン事務所「カギカッコ」のゲンママコトさんで、「トコトコのコはcoの方がかわいいと思う」とか、そういうところもアドバイスいただきながら現在の形になったんです。

名前の最後についているドットは、ゲン担ぎというか…(笑)。画数を調べた時に、あと一画何かを足せば運勢が良くなるという結果だったので、じゃあドットをつけよう!となりました。



―tocotoco.さんの作品というと、お花のモチーフをよく使われているイメージですが、元々お好きだったんですか?


私が好きかどうかというよりは、革ってバイク用の小物だったり無骨で男性っぽいイメージが強かったんです。そうじゃなくて、もっと柔らかいイメージで女性でも気軽に身につけられるものがないかなと思って。元々アクセサリーを作るのが好きということもあって、アクセサリーというカテゴリーで考えた時に、革だけどゴツくなくてかわいらしくて…ということで採用されたのがお花モチーフだったという感じです。

革のカラーも、アクセサリーを中心にほぼ自分で染めています。3~4年くらい前から、好きなアイドルやアーティストのライブに行くから、その人のイメージカラーのアクセサリーを作ってほしいというオーダーも時々受けるんですよ。


―使用している革はどのようなものがあるんでしょうか?


基本的には牛革で、場合によって羊を使ったり。それに加えて最近は、ヒグマやシカ・イノシシといったちょっと珍しい革を使うこともあります。

これらは、数年前にSNSを通じて知り合った広島の猟師さんから仕入れています。その方がご自身で革を加工して販売していて、試しに1枚買わせていただいたらとても良かったので、現在も使わせてもらっているんですよ。

ヒグマやイノシシは珍しさや話題性も手伝ってか、「話のタネになりそう」とビジネスマンの方が名刺入れにとオーダーされることもありましたね。


―しばらくは店舗を持たずに活動をされていたと思うんですが、現在の場所に店舗兼アトリエを構えることになった経緯をお伺いできますか?


4~5年くらいは、委託という形でCOFFEE STAND CONTAINERさん等いくつかの店舗で販売したり、イベントに出店したりといった活動をしていました。

そんな中でハルニレカフェの店主今井さんに、ここに元々入っていたお洋服屋さんがお引っ越しされるという話を聞きまして。その時は「誰かいい人が入るといいね」なんて話していたんですが、緑道には親しい方もたくさんいらっしゃるし、「私がここに入ってお店ができたら楽しいんじゃないかな?」と考えるようになって、ここでお店を構えるという運びになりました。

現在の形になったことで、よりお客様と直接色々お話する機会が増えました。そのおかげで、幅広くいろんな方にお会いしたり、様々なオーダーを受けたり、そこから違う仕事につながることもあったり…。ここにお店を構えて6年になるんですが、あの時決断してよかったなと思っています。


―お店を構える前もよく緑道に来ていたということだったんですが、実際にお店を構えてみて、改めて緑道の魅力ってどんなところだと思いますか?


中心部には近いんだけど、ごみごみしていないというか。人の動きもゆったりしているような気もしますし、車もそこまでガンガン走るわけではないので、そういう雰囲気というか流れが好きですね。

お店が緑道に面しているので、窓から季節の移り変わりを楽しむことができるのもいいなと思っています。


―三和緑道商店会についてはいかがですか?


他の商店会を知らないので比べることはできないですが、みなさん本当に熱心ですよね。

サマフェスやクリスマスマーケットといった毎年のイベントは、商店会全体で動くことが多いじゃないですか。商店会としてのイベントとお互いの横のつながりを大切にしているのがとてもすてきだなと思っていますし、これからも続いていってほしいと思います。



―長谷川さんは現在「OTO Create.」という会社の経営陣としても活動されていますが、こちらはどんな会社ですか?


OTO Create.は、一言で言うと、キャンプ場の運営をしている会社です。

今tocotoco.がとある会社の一部に入らせてもらっているんですが、そこの社長さんが大変にキャンプ好きな方で、「バスを買ってキャンピングカーを作ろう!」という話から始まって、「どうせなら自分たちがキャンプをしたり焚火ができるようなキャンプ場を作りたいね」と盛り上がった結果、誕生した会社なんです(笑)。

会社を立ち上げてすぐ、永山町14丁目にキャンプ場を作り始めて、完全に手作りで約1年かけて、今年の2月にキャンプ場が完成・オープンとなりました。その中でアウトドアの宣伝もかねて様々なイベントに出店して、アウトドアグッズ等を販売する活動も並行してやっていました。

新しく出来たばかりでまだそこまで知名度はないのですが、市内中心部を外れた小さなキャンプ場なので、そこを拠点にして旭川観光に出かける方がいたり、海外から来て層雲峡登山の足掛かりとして利用して下さる方がいたりと、みなさま思い思いに使って下さっています。

また、「手ぶらキャンプ」という、何も持たずに来てもキャンプ道具一式貸し出しますというプランもあるので、キャンプをしたことがない方や、久しぶりにキャンプをする方にもぜひ気軽に利用していただきたいですね。


―最後に、今後の展望をお聞かせ下さい。


OTO Create.を立ち上げたことでそちらにかかりきりになってしまって、tocotoco.は留守にしてしまっていることが多いんですが、今後tocotoco.としてはアクセサリーの他にアウトドアグッズも作っていきたいなと思っています。今作っているアイテムとしては、ガス台のカバーとか、コーヒーフィルターを入れるケースとか。こちらも男性目線というよりは、女性が「こういうものがあったら楽しくキャンプができるね」というものを作っていけたらという気持ちです。

OTO Create.としては、キャンプ場を利用していただく方を増やすのはもちろん、アウトドアに携わるきっかけになるような場所にしていけたらいいなと思っています。先程お話した「手ぶらキャンプ」のプランもあるので、気軽にキャンプに来られる場所になったら嬉しいですね。



[インタビュアーからひとこと]

私個人としてはMaitoPartaオープンの頃からよくお店に足を運んでいただき、何年も仲良くさせてもらっている長谷川さんですが、実はこれまで聞いてこなかった作家活動のきっかけなど、今回の機会に大変興味深いお話をたくさんお伺いすることができました。

男性的なイメージの強い「革」という素材を、華やかで柔らかい印象の作品に仕上げていくのは、長谷川さんの技術ももちろんですが、人柄やセンスがにじみ出ているものなのかなと感じています。

長谷川さんのような素敵なクリエイターがこの場所で活動して下さっていることは、商店会にとっても財産の一つです。



インタビュアー 知本有里

札幌市出身。23歳の時就職をきっかけに旭川へ。

現在緑道にて北欧雑貨店「MaitoParta」を営む。

店舗の2階で暮らす、名実ともに緑道の住人。


三和・緑道商店会

北海道旭川市7条緑道を中心とする三和・緑道商店会は、ここで生きる「人」のくらしを第一に考え、「まちと人」「人と人」「自然と人」をつなぐことを目的として活動しています。

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